膠原病 リウマチ科を受診される方へ

当クリニックの膠原病 リウマチ科では、関節リウマチを主に診療いたします。そのほかに、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎・皮膚筋炎、強皮症、血管炎などの膠原病や膠原病類縁疾患も専門としています。責任を持って診療を行い、クリニックでの管理が難しく、全身精査が必要な場合や入院が必要と判断された時は、適切に基幹病院に依頼してご紹介いたします。
以下に、代表疾患である関節リウマチについて簡単に説明いたします。


関節リウマチとは

関節リウマチは、原因不明の免疫異常により主に手、足の関節の中にある滑膜に炎症が起こり、関節のこわばり、痛みと腫れを主症状とする病気です。
滑膜の炎症が続くと痛みだけではなく、次第に関節の軟骨や骨の破壊が起こり、関節の変形が進み、各関節の機能障害から日常生活に支障をきたしてしまいます。

また、血管、心臓、肺、皮膚、神経等の全身組織にも障害が起こることがあり、動脈硬化の危険因子でもあります。
近年の治療法の進歩により、早期から治療を開始することで、関節の炎症を抑え、関節の変形や破壊を抑え、今までの生活を維持することが可能となってきています。

膠原病とは

膠原病とは1942年に病理学者のクレンペラー博士が提唱した疾患概念です。膠原病は、普段はウイルスや細菌などの外的から身を守る役割を持つ免疫が、何らかの原因で過剰になり、自分を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。全身の臓器や血管、細胞と細胞の間に膠のように存在する結合組織で炎症が起こります。

そのため、発熱や全身倦怠感、関節や皮膚、血管など多数の臓器に様々な症状を現します。具体的には、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、血管炎などの疾患があります。全身性疾患で症状が多岐に渡るため、専門医による全身の評価と適切な診断、治療が必要です。

以下のような症状がおありの際には、お早めにご相談下さい。
  • 朝起きた時に、「身体がこわばる」、「手が腫れぼったい」、「手が完全に握れない」などのこわばり症状がある
  • 手、足、肩、肘、膝など複数の関節に腫れや痛みが続く
  • 健診でリウマチの数値が高いと言われた
  • 風邪などを引いていないのに、微熱が続く
  • 冷たいところで指先が真っ白になったり真っ青になったりする(レイノー現象)
  • 全身の力が入りにくくなり、だるさや息苦しさがでる

関節リウマチの診断

関節に痛みや腫れがあったとしても、関節リウマチ以外に考えなければならない病気はたくさんあります。感染症に伴う関節炎、全身性結合組織病(シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデスなど)、リウマチ性多発筋痛症、変形性関節症、痛風・偽痛風、成人スティル病など、多岐に渡りますので、まずは、しっかりと診断することが重要です。
診察の流れを簡単にお示しします。


  • 問診:具体的な症状とその出現時期と経過、過去と現在における病気の治療歴、リウマチ性疾患の家族歴、生活習慣など
  • 身体所見:腫脹または圧痛のある関節の部位と数、心肺を含めた全身の合併症の有無
  • リウマトイド因子(RF)、抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体の有無とその力価、抗核抗体、炎症マーカー(CRP、ESR、MMP-3など)、肝機能や腎機能などの臓器障害の有無
  • 感染症や間質性肺炎などの合併症の有無、手足の骨破壊の有無
  • レントゲン検査:感染症や間質性肺炎などの合併症の有無、手足の骨破壊の有無
  • その他:必要に応じて、心電図、超音波検査、CT(院外)、MRI(院外)

早期診断の重要性について

早期のリウマチは症状が軽く、診断が難しい場合があります。関節の痛みや腫れは、年齢とともに起こる変形性関節症や変形性背椎症に多く見られますが、関節リウマチが隠れていることもあります。当院では、患者様のお話しをよく伺い、肉眼では分からないような関節の軽微な腫れにも注意を払い、関節リウマチの早期診断に努めていきます。

関節リウマチは、早期に発見することにより、内服薬や注射薬を使用する治療で症状をほぼ抑えられ、関節の変形を防ぐことが可能です。もちろん、今ある治療法を用いても炎症を抑え込めない方や合併症や副作用のために十分な治療ができない方がいらっしゃるのも事実ですが、生物学的製剤のような画期的な新薬の開発に伴い、「寛解を目標に、そして寛解を持続させる」時代となっています。的確な早期診断と適切な早期治療が非常に重要です。少しでも気になる症状がございましたら、お気軽に当院にご相談下さい。

関節リウマチの治療

薬物療法

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

消炎鎮痛薬により痛みや炎症を緩和します。これだけでは関節の破壊は抑えられませんので、補助的な薬剤です。


副腎皮質ステロイド

副腎皮質ステロイドは本来自分自身の体で作られるホルモンです。関節の炎症を抑える作用は強力ですが、内服用量と期間に応じて高血糖、脂質異常症、骨粗鬆症などの副作用が必ず出ます。関節の腫れが良くなったとしても、副作用が問題となりますので、使用するにしてもなるべく短期間で減量し、なるべく少量とすることが主流になっています。


抗リウマチ薬(DMARDs)

数種類ある中でもビタミンの一種である葉酸を抑える働きのある薬剤は関節の炎症を抑えて、中長期的な関節破壊を抑えることがわかっています。効果が出てくるまで数ヶ月かかることや、効果のある人とない人がわかれること、数年後に効果が落ちる現象が発生することもあります。また、関節破壊を抑える力は完璧ではありません。副作用として、感染症、骨髄抑制、間質性肺炎などの特有のものもあります。


生物学的製剤

RFまたは抗CCP抗体高力価陽性、骨びらんや関節外症状の存在などの予後不良因子を持つ症例や、抗リウマチ薬では不十分な場合に、強力な生物学的製剤の点滴や皮下注射により関節リウマチを寛解状態に導きます。数種類のうちどの薬剤を使用するかは、標的、症状の程度や進行、合併症の有無など副作用の起こりやすい背景を持っているかどうか、生活スタイル、担当医の使用経験など様々な点を考慮して、患者さんご本人と相談しながら決めていきます。

注意点として、感染症にかかりやすくなるのに加えて、体に潜んでいた病原体(結核菌、B型肝炎ウイルスなど)が活発化してしまうことがあります。そのため生物学的製剤は、その使用にあたって、専門医による適切な評価と注意が必要な薬剤です。また、生物学的製剤は遺伝工学に基づいて製造されているため、値段が高いという短所があります。

上記治療薬を、病状に応じて使い分けまた組み合わせることにより、寛解状態に導き、関節破壊を防止します。
関節リウマチによる関節破壊は、発症2-6ヶ月で現れ、最も進行が速い時期は発症2年以内と言われています。そのため、発症後できるだけ速やかに炎症を抑えることが治療のポイントとなります。
発症早期から適切な薬を使い、必要ならば複数の薬を併用することにより関節破壊を防止することが、最近の関節リウマチ治療の主流となっています。

手術療法

以上のように、技術の進歩に伴い、治療の選択肢が広がってきていますが、関節リウマチ以外の合併症や副作用のために十分に薬剤が使用できないなど、内科的な治療を行っても関節破壊が進行してしまう方がいらっしゃるのも事実です。また、すでに関節が破壊されてしまい変形を来している場合は、薬ではなかなか治らず、過度に使用することでますます変形が助長されることがあります。そうなると、手術が必要になります。

手術によって関節の動かしにくさや変形からくる痛みを是正して日常生活を送りやすくすることが目的です。また、頸椎に変形を来し、飲み込みづらさやしゃべりづらさ、歩行障害や感覚障害などの神経の圧迫による症状が出ているときも手術の適応となります。手術が必要と判断される場合には、信頼のおける医療機関へ適切にご紹介いたします。