身近な心臓病について

かつては“心臓病は特別な病気”という印象がありましたが、現代では高齢化や食生活の欧米化の影響により、誰もがかかる可能性のある「身近な病気」になっています。実際、厚生労働省の統計では、心臓病は年齢とともに増加し、特に高齢期には最も重要な死因となっています。

心臓病は、早期に検査を受け、リスク因子を把握し、必要に応じた治療や生活習慣の改善を行うことで、予防や進行の抑制が可能です。

心臓病の主な種類

  • 心不全
  • 狭心症・心筋梗塞
  • 不整脈
  • 弁膜症
  • 心筋症
  • 先天性心疾患
  • 大血管疾患
  • 静脈疾患・肺高血圧症
  • 心臓腫瘍
  • その他の心疾患

このうち、心不全や不整脈は他の心臓病に続いて発症することが多い病態です。不整脈は単独で起こることもあります。これらの疾患の多くは、医療技術の進歩により、早期発見・適切な治療によって改善が可能となっています。

各疾患の特徴

心不全

心不全は、心臓の働きが低下し、体に必要な血液を送り出せなくなる状態です。息切れやむくみなどの症状が現れ、高齢者に多く見られます。生活指導や薬物療法に加え、重症の場合はペースメーカーや心臓移植などの先進的な治療も検討されます。

狭心症・心筋梗塞

動脈硬化により冠動脈が狭くなることで血流が不足し、胸痛を引き起こすのが狭心症です。動脈が完全に詰まり心筋が壊死する状態が心筋梗塞で、緊急対応が必要です。心電図や画像検査で診断し、カテーテル治療やバイパス手術で治療します。

不整脈

脈が不規則になったり、速くなったり遅くなったりする状態で、動悸やめまい、失神の原因になります。突然死につながる重症例もあります。検査で原因を特定し、薬やカテーテル治療、ペースメーカーなどで治療します。

弁膜症

心臓内の弁がうまく機能せず、血流に障害が出る病気です。息切れや動悸などの症状があり、進行すると心不全や不整脈を引き起こします。手術やカテーテルによる弁置換で改善が可能です。

心筋症

心筋に異常が起き、心臓の機能が低下する病気です。原因不明のことも多く、心不全や不整脈を伴います。心エコーやMRIによる精密検査が必要で、状態に応じて治療します。

先天性心疾患

生まれつきの心臓の構造異常です。小児期に治療された方が成人後にフォローを必要とするケースや、高齢になって発見される場合もあります。診断には心エコーが有効で、カテーテル治療で治癒可能なケースもあります。

大血管疾患

大動脈瘤や大動脈解離など、心臓から出る大血管に関する病気です。症状がないこともありますが、破裂すると命に関わる危険があります。定期検査と、動脈硬化リスクの管理が大切です。

静脈・肺高血圧疾患

静脈瘤や肺塞栓症、肺高血圧症などが含まれます。長時間同じ姿勢での生活や、手術後などにリスクが高まります。ふくらはぎの痛みや腫れなどに注意し、早めの診断と治療が必要です。

心臓腫瘍・その他

まれではありますが、心臓に腫瘍ができることもあります。主に心エコーで診断されます。

心臓病の予防

心臓病の中でも、狭心症・心筋梗塞、大血管疾患は生活習慣の改善により予防が可能です。動脈硬化の進行を抑えることがカギとなります。以下のようなリスク因子をお持ちの方は、早めの対策が大切です。

  • 高血圧(上の血圧130以上)
  • 糖尿病(空腹時血糖値100以上、またはHbA1c高値)
  • 高脂血症(LDLコレステロール140以上、中性脂肪150以上)
  • 喫煙習慣

当クリニックでの取り組み

当クリニックでは、一般内科医と共に、循環器専門医が心臓・血管の異常にも対応しています。問診・診察を行い、以下のような検査を活用して診断します。

  • 心電図
  • 胸部レントゲン
  • ホルター心電図(24時間心電図)
  • 心臓・腹部・頸動脈エコー検査

これらの検査により、約8割の循環器疾患は当クリニックで診断・治療が可能です。より高度な検査や治療が必要な場合には、適切な専門機関をご紹介いたします。